第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
賑やかな方に足を向けると町中(まちなか)の広場に人だかりを発見した。
その真ん中で一人の若い青年が何やら披露している。
「佐助くん、あれって手品じゃない!?」
「みたいだな。見ていく?」
「うん、見たい!」
マジックショーとは珍しい催しだな。
俺と莉菜さんも盛り上がる人々の後ろに並んで観覧することにした。
「さぁて 次はお待ちかねの『札当て』だ! そこの奥さん、タネも仕掛けもないこの札の中から一枚好きなのを選んでくれ」
「私が選ぶのかい? じゃあこれを」
指名された女性が札を一枚選ぶ。
手品師の青年は女性と観客全員に札の絵を覚えさせた後、札を束に戻して全てをシャッフルした。
「んーー… あんたの選んだ札は……ーーー これだァ!!」
(オオォー!! パチパチパチ………)
札をぴたりと言い当てた青年に対し、どよめきと拍手が起こる。
特に珍しくはない無難なマジックだけどさすがは戦国時代、大盛況だ。
「わぁ、すごーい…!!」
莉菜さんも爪先立ちになって目を輝かせてる。
「その位置からちゃんと見えてる?」
「えっ? あ、うん、なんとか!」
「良かったらこっちへ」
ほんの親切心で莉菜さんの両肩に触れて誘導し、自分のすぐ前に立たせた。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
(ドクン)
柔らかい肩の感触が手に伝わった瞬間、またさっきの症状が出始める。
こうしてると莉菜さんのツムジがよく見えるな。
…しかし困った、今回はなかなか動悸が治まらない。