第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
「佐助くん、愚痴っちゃってごめん… 団扇もずっとあおいでくれてありがとう」
数十分後、落ち着きを取り戻した莉菜さんが俺に頭を下げた。
「急に環境が変われば誰だってストレスは溜まる。俺で良ければいつでも吐き出してくれていいから」
「ふふ、そうさせてもらうね。佐助くんが居てくれて良かった!」
ニコッと笑ってそう言われるとやけに嬉しく感じる。
とにかく鬱憤を溜めて塞ぎ込むのは良くない。
「あ」
その時、ある案が頭に浮かぶ。
「莉菜さん、来週中で空いてる日はある?」
「え?」
「紫陽花でも見に行かない? きっと今の時期、見頃だと思う」
「紫陽花かぁ…! うん、行く!」
…いい笑顔だ。
閉じこもってるより出掛けたほうが気分転換にもなる。
待ち合わせの日時を約束し、その日は別れた。
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