第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
しばらくして…
「はぁ」
人間扇風機の効果で少しのあいだ穏やかだった莉菜さんの表情がまた曇ってきた。
「実は最近、色々悩んでて」
悩み…?
仕事の悩みだろうか?
それともまさか恋愛がらみ…ーー
「何かあったなら聞かせて欲しい」
「つまらない話だけどいい?」
「もちろん。どんと来い」
「ありがと、あのね…」
話しやすいようキッカケを作ると莉菜さんが遠慮がちに口を開く。
「窓に網戸が無いから部屋にいっぱい虫が入って来るのがイヤなの。お風呂にシャワーもないし、争い事はしょっちゅう起こるし… この前も城に敵が攻めてきて信長様たちと斬り合いになってすっごく怖くて」
「斬り合い… それって一週間前の?」
「そうそう、って何で知ってるの!?」
「ごめん。実はその時、広間の床下に潜んでたんだ」
「ええ!?」
「諜報活動中にたまたま敵襲があって… 君の安否を確認しつつギリギリのラインで様子を見てた」
「そうだったんだ…!」
言うまでもなく莉菜さんが絶体絶命のピンチに陥ればその瞬間飛び出すつもりだった。
秀吉さんと三成さんの二人が君をがっちりガードしてたから様子見するに留まったけど…
「君に被害がなくて良かった。でももし今後、俺が居ない時に危険な目に遭ったら出来るだけ強い武将に守ってもらうんだ。いい?」
「う、うん…」
虫やシャワーはともかく斬り合いはさぞ怖かっただろう。
できれば俺が君専属のSPとして側にいてあげたい、けど現状ではなかなかそうもいかなくて。
ワームホールが開くまでは今の生活を耐え抜いてもらうしかない…ーー
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