第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
7月中旬、
長かった梅雨がようやく明けた。
莉菜さんは元気にしてるだろうか。
けっきょく紫陽花を見に行って以降、忍びの任務に追われて医者に行くどころか莉菜さんの様子も見に行けていない。
休みを貰えた今日は久々に鉄壁・安土城に潜り込もうと朝から気合いを入れていた。
安土に向かうため、馬で駆けていると…ーー
「…! すごい」
途中、森を抜けた所で あたり一面に広がるヒマワリ畑を発見した。
青い空に白い雲、そして黄色いヒマワリのコントラストは圧巻だ。
(そうだ)
ヒマワリを手土産にしようと思い立った俺は畑の管理者らしき人に数本売って欲しいとお願いし、小ぶりのものを選んで花束にしてもらった。
これを見て喜んでもらえるといいな。
莉菜さんの笑顔を思い浮かべながら残りの道を急いだ。
ーーー
厳重な警備態勢が敷かれる中、無事 莉菜さんの部屋の上に辿り着いた。
ずいぶん馬を飛ばしてしまったけど幸いヒマワリは傷みもなく元気に咲いてる。
天井板をノックしようと右手を握った時、
「…!」
かすかな足音を察知し、スッと気配を断つ。
この音は秀吉さんか。