第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
焼き鳥の後はうどん屋に、うどん屋の後は甘味処を訪れ食後のデザートを堪能した。
食事や散歩しながら世間話をする、莉菜さんと居るとそんな普通のことが楽しくて仕方ない。
ただ気掛かりなのは頻繁に"あの症状"が現れることだ。
怪我はもちろん、病気をすることも今の俺には許されないというのに。
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不安を抱きつつも持ち前の無表情でやり過ごし、夕刻前には莉菜さんを安土城に送り届けた。
すると一人になった途端、どういうわけかあんなに酷かった胸の締め付けや目の眩しさがピタリとおさまり…ー
その代わり、今度は何とも言いようのない空虚感に襲われ気分が落ち込む。
「おかしいな… 健康には自信があったんだけど」
ここまでくると"気のせい"では済ませられない。
次々起こる諸症状に首を傾げつつ帰路につくと、ポツ、と頭に水滴が落ちた。
「雨か……」
止んでた雨がまた降り出したみたいだ。
しばらくは梅雨特有の長雨と蒸し暑さが続く。
莉菜さんのために、扇風機の技をさらに磨いておこう…ーー
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