第1章 初恋は突然に/ピックアップ御礼・記念作品
「ふぅ…」
「……っ」
青年の姿が見えなくなったのを確認後、腰からゆっくり手を離す。
あの場をやり過ごすためだったとは言え無許可で恋人のフリをするなんて失礼なことを…
莉菜さんを不快にさせてしまったに違いない。
「すまない… ああするのが一番効果的かと思って。お節介だったかな」
勝手な行動を謝罪すると莉菜さんは恐縮しきった様子で首を横に振った。
「私こそごめんなさい! ショーが終わった後、皆が投げ銭していて… 私もしようと思って近付いたら声をかけられたの。最初は普通の雑談だったんだけど だんだん変な話に…」
「なるほど、そういうわけか」
「でも、あの人が言った通り私にも隙があったんだと思う。もっとしっかりしないとっていつも思うんだけど…ーー」
「そんな事はない、君は十分しっかり者だ」
「うーん、そうかなぁ… 自信ないな……」
「さらに付け加えると君は無自覚のうちに他人の目を惹きつけてしまうほどに魅力的な女性だ…ってこと」
「みっ、魅力的!? いやいやいや、良く言い過ぎだよ!」
「少なくとも俺は本当にそう思ってる」
「っ、佐助くん…… それって」
「とりあえずどこかに座って焼き鳥を食べよう。冷めないうちに」
「う、うん… 迷惑かけてごめんね。助けてくれてありがとう」
仕切り直すと柔らかな笑みを向けられ心がほんのり温まる。
迷惑などころか友人のピンチに手を貸すのは当たり前のことだ。
これからもありとあらゆる困難から君を守ってあげたい…ーー
今の一件でその想いがより一層強くなった気がした。
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