【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第1章 淡い。
* * * *
『私はね、フローザー・シェリルっていうの』
『うるさい、少し黙ってて』
『大丈夫だから、ね…?』
(一体、なんなんだ…)
分かっているのは、彼女がただの人間ではない…という事。
そして、自分を助けてくれたのは、紛れもない彼女だというここと…。
まだクラクラしている頭を一度、左右に振って思考を冴えさせる。
アイツが…、【クイーン】か?
息苦しい布を何とかして解き、俺はふぅ…、息を吐く。
ドアの向こうにある玄関で、島民たちが彼女を責め立て、怒鳴っているように聞こえた。
息を整えて耳を澄ますと、会話がはっきりと聞こえてくる。
「あの海賊たちを、早く殺せ!!」
「今すぐに」
「クイーン、さぁ、行きましょう」
『私は、』
騒がしかった島民たちの声は、彼女の発した一言で静まり返る。
そして、少し間を置き、平然とした声で言い放った。
『もう…海賊は殺さない』
―前々から、決めていたこと―