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【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。

第1章 淡い。


*  *  *  *

はぁ…、ばか。


「私のバカ」

彼はうなされながら眠っていて、この家には私たちしかいなくて、誰も私の呟きなんて聞いているはずがない。
なのに、すぐに静寂に戻ってしまうような、そんな何もない部屋で無意味にも呟いてしまった。


苦しいの…?

どんなに語りかけても無駄だ、返ってくる言葉なんてない。
この空っぽの心が埋まるわけでもないのに…、本当に、意味のない語りかけは続く。

ねぇ、ちゃんと生きてる?

「う、ぁ…、は…っ、ぅ…」
『…刀、此処に置いておくから』


(この人はきっと、今日島に来た海賊の船員だわ…)

腕には見慣れないタトゥーが掘られているし。
それに、こんなに大きな刀を持っている。
殺すつもりが助けてしまうなんて、なんてバカなこと…。
もう、この海賊は殺せない、そう悟って頭を抱えた。


久しくも、海賊に情が移ってしまったから。

『あなた、名前は?』
「はぁ…っ、ぅあ……」
『私はね、フローザー・シェリルっていうの』

そっと頬に触れると、ビクッと反応したのが見られた。
あ、ちゃんと生きてる、感覚は分かるんだ。
額に浮かんでいる汗をタオルで拭いてあげている最中に、手がピタリ、と止まる。
スッと目を瞑って耳を澄ませ、全神経を聴覚に集中させた。


ザッ、ザッ…。

『…誰か来た』


チラッと小窓から外を見ると、島民が片手に武器を持ちながら、辺りをきょろきょろと警戒した様子で向かってきている。
幸いにも、この家に海賊がいるということは知られていないみたいだ。
影で、椅子に体を固定するように拘束し、まだ荒い吐息を零している彼の口元に布を押し当てた。
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