【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第6章 花筏。
シェリルside
* * * *
『私を見ないで…ッ!!』
水底で、孤独に。
ひどく傷ついたような彼の顔を見て、泣き叫ぶ。
ローの瞳から流れている、一粒の涙。
違う、こんな事、望んでない…っ!!
(私は、ただ、あなたを守りたくて…っ、)
「シェリル…」
…違う、私はシェリルなんかじゃないっ!!
私は、残酷な人魚であって、あなたの愛した人じゃない。
『残念だけど、あなたの愛したシェリルは死んだよ』
今、私の身体の主導権を握っているスウェルが、にこやかに言い放った。
ローは、ぐっ、と唇を噛み締めたまま、私を見ている。
剣をギュッと握り直し、決意したかのような眼差し。
けれどその瞳には、わずかな後悔が宿っていた。
「嘘だ、」
『事実だ。私が、死んだこの子の身体をもらった』
「嘘だ……ッ」
沈黙が、甲板を包む。
スウェルは、はぁ、とため息を吐き、俯く。
その時、ぽた…、と、床を「何か」が濡らした。
「じゃあ…、なんで泣いてんだよ」
『――――――――ぇ、』
「シェリルッ!!」
すがりつく様な、声。
何度も聞きたいと願っていた、愛しい声。
向けられた剣が、カタ…カタ…、と震えている。
*
『スウェル、身体を返して』
『…………』
『ローに会いたい…っ、』
堪えていた気持ちが、すべて溢れ出す。
ぼろ…ぼろ…、と、頬に涙が伝い、水面に落ちる。
うぅっ、と嗚咽を吐く口元を両手で覆い、懇願した。
『顔を上げな』
私の頬を両手で挟み、顔を上げさせる。
瞳を開けると、初めて見た、彼女の表情がそこにあった。
にこやかで、優しい微笑みが…。
私の髪を透き、ふぅ、とため息を吐く。
『身体は返すよシェリル、』
『スウェル…っ』
『あの男を殺した後で、ね』
―私の首に手をかけて、―