【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第6章 花筏。
ローside
* * * *
「……はぁ…」
見知らぬ女が、何度も夢に現れる。
ノイズにかき消された声、霧で見えない姿。
両手で顔を覆い、泣きながら、何かを叫んで。
ただ、唯一見える口元は、いつも最後に決まった言葉を言う。
…いつも最後には、愛してるよ、と呟いて微笑む。
手を伸ばせば、そこで、夢は終わる。
彼女の右手首を掴み、瞬間、現実へ戻される。
こんな毎日を、永遠に繰り返し続けるなんて、ごめんだ。
「船長…っ、海面に人魚が浮かんでる!!」
「あァ? …浮かんでるって……、」
本を手にしたまま、自室から甲板へゆっくりと歩く。
ドアを蹴り開け、全員の視線が集中している海面を見た。
ぐったりとした様子で、木片に片腕を乗せている。
目立った外傷はない、が、船員たちが、助けよう、と口を開き出した。
(これだから、コイツ等は……、)
ため息を漏らすと、俺は緩んでいた気を振り払った。
潮風に乗って、何人もの血の臭いがした。
この、可憐とも妖艶とも見える、美しい人魚から。
「お前ら、迂闊に近づくな」
「え…、キャプテン…?」
「そいつは、ただの人魚じゃねェぞ」
クスッ
―人魚は笑みを綻ばせて、―