【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第1章 淡い。
「…降ってきたか」
冷たい水の粒が、ザァー…と容赦なく地面に落ちてきた。
手に持っていた刀を肩にかけ、街に引き返そうと、踵を返す。
その瞬間、雨でぬかるんだ土壌に足を取られ、身体が中に浮いた。
背後を見ると、底が見えない、真っ暗な崖が口を開けている。
チ…ッ。
(まぁ、この程度なら――――ぃ゛っ!?)
ズキンッ。
地面に足を取られた時に足を捻ったらしく、地から、踏ん張ろうとしていた足裏が離れる。
すでに、肩にかけていた刀は崖に吸い込まれて、俺は意味もなく、右手を虚空に伸ばした。
(俺は…、バカか?)
ベポもシャチも、ペンギンも、船員は皆、街に行ったんだ。
誰も…、好き好んでこんな森奥に来るはずがない。
それでも、空虚なまでに、何も掴む感覚のない手を、肩から腕が千切そうなくらい必死に伸ばした。
けれど、重力に身体は引っ張られて。
「くっそ…!!」
斑になった空を最後に、ぐっと瞳を閉じた。
『お困りですか、目つきの悪いお兄さん?』