【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第3章 散り際。
* * * *
新世界に近い場所にある、霧の深い森『フレシュテア』。
ここは、過去に、謎の死を遂げる呪われた土地、というので有名で、海賊も海軍も…好き好んで立ち入らない島。
少しばかり魔術を扱える私には分かったが、ここで起こった『謎の死』は、呪術によるものだろう。
(これだけたくさんの術式が書かれてたら、そりゃ、大勢死ぬわよ…)
「気味悪いけど、ここが1番『安全地帯』かな」
誰かに追われる生活。
安らげる場所なんて何処にもなくて、ただ、深くフードを被って気配を消して。
目立たない場所を探して、ようやく短い睡眠を得られる…。
自分の身を護るために、それなりの『覇気』も、かじった程度だが、扱えるようになった。
荒れ狂っていた最初の時期よりかは、いくらか、マシにはまったと思う。
(ここに身を隠して、そろそろ半年が経つなぁ…)
「記念パーティーでもしますか…!」
一人、朗らかな笑みを浮かべて。
美味しい果物の成っている地域を目指し、私は金属製の煙管を手にして歩き出す。
『これ』は、ある島に立ち寄った時に買った、口に含むと甘い香りがする物だ。
私が一目惚れして買った、唯一の品物…。
「あー、良い香り…♪」
彼と同じ香りがする。
媚薬にも似た、これは少し甘ったるくなっているが、風がなびいて香りが薄くなれば、それらしくなる。
この海の向こうで、海賊王になろうとあらゆる島を巡り、『新世界』を目指している彼…。
毎日、ローの無事を祈って送る日々は、こんなにも私を幸せにさせる。
「あった、あった!! ウェベリー♪」
赤紫色に輝いていて、口に入れると甘い酸味が広がる、1番大好きな果物だ。
私は我慢できずに一つ摘み、口の中へ放り込んで食べる。
こんな毎日がずっと続いてくれたらいいのに…っ!!
そんなことを思いながら、テンション上げ上げで摘んでいった。
―早く攫ッちまいてェな―