【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第2章 花言葉。
* * * *
あの隈男の船に乗って、もう3日が過ぎた。
最初は皆、私を遠くから見ているだけで、話しかけてくれなかったけれど…。
毎日のように船長さんと乱闘を繰り返していると、次第に打ち解けていった。
「おい、これ食えよ」
『あ! ありがとう、ペンギン!!』
「シェリルは本当にかわいいなぁ…」
『ベポ、照れるって//』
朝ごはんをお腹いっぱい食べて、私はみんなより先に甲板に出て行った。
爽やかな風がなびいて、銀髪を撫でるように透く。
海面は太陽の光を浴び、キラキラと宝石のように輝いている。
『きれい…』
「海に出てよかっただろ? シェリル…」
ビクッ。
突然聞こえた声に驚き振り返ると、刀を肩にかけ、壁に寄りかかっている、あの男の姿があった。
露骨に嫌な顔で彼を見て、再び海へと視点を戻す。
近づいてくる足音に気づき、横を向いた瞬間、片手で首をグッと握られた。
その手には、力は込められていない。
『…なっ、何ですか!!』
「あの島であった時は…」
『……?』
「お前は、人形みたいな奴だった」
捕らわれたような感覚。
殺気じみた目でもなく、怒っている目でもない。
ただ、懐かしそうに私を見つめる、穏やかな眼差しだった。
そんな目を向けられるのは本当に久しぶりで、どうしたらいいのか分からずに、彼から目を逸らす。
が、それを良しとしない彼に、こっちを向け、と、首に力を込められた。
『………っ』
「でも、今のお前は変わったよ。笑うようになった」
『それは、目つきの悪い人のおかげかな』
私を、連れ出してくれた。
一瞬、私を見つめる瞳が大きくなった気がした。
にこやかに微笑んでいる私から、首を握っていた手を離し、船の中へと戻っていく。
聞こえないように、小さな声で、ありがとう、と呟いた。
―聞こえてンだよ、バカ―