【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第1章 淡い。
* * * *
「【クイーン】…っ、港に海賊船が!!」
『大丈夫だよ。もう知ってるから…』
顔には特に感情を出さず、ただ平然と答える。
用事があるので…、そう言ってドアを閉めようとしたら、ガッと足を挟まれ、無理やり開けられた。
グ…ッと、強く腕を握られ、痛みに顔を一瞬歪めながら、私は瞳を大きく見開いた…。
「あぁ、どうかお助けください」
「この島の秩序を乱す、愚かな海賊を…どうかっ!」
「明日は嵐で、海軍を呼ぶには時間がかかります」
「どうか、どうかっ、今一度…あなた様のそのお力で!!」
(あー、やだやだ…)
藁にもすがる様に、毎度私の家に押しかけてくる島民たち。
まだ、彼ら(海賊たち)は何もしていないというのに…。
彼らの思考には、【海賊は皆、悪】だという認識が、刷り込まれている。
(そんなこと、ないと思うのだけれど…)
はぁ…。
『分かりました、何とかします。…海賊たちに対して、反発するような行動はしないで下さいね。殺されてしまうかもしれませんから』
「ありがとうございますっ!! 我らが島の守護神、【クイーン】!」
誰が、島の守護神よ…。
心の中で、ハ…ッと吐き捨てるように呟き、ドッと家を訪れてきた島民を帰らせた。
古びた木のドアを閉め、背を向けて寄りかかる。
(煽ってあげて、すがって、遂には神扱いか…)
そのままズルズルとしゃがみ込み、天井を見上げ、嘲笑った。
自分を、自虐した。
―私は、生身の人間なのに―