【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第1章 淡い。
「…あそこか」
波は穏やか。天候は疑いようのない快晴。
進行方向の先には、たくさんの貿易の船が停泊している。
ただ単に、食料調達が目的で立ち寄る島だ。
「…あの島には、『ヤバい奴』がいる」
「あァ? 何の話だ??」
ペンギンの呟きを、俺は聞き逃さなかった。
言うのを躊躇ってグズグズしているシャチに、ゆっくり歩み寄って見つめた。
そう、ただ、見つめただけだ。
周りの奴等は、睨んでいる、と受け取るらしいが…。
「ぁ、いや…、聞いた話なんですけど…」
*
これから立ち寄る島、『リトア島』っていうんです。
周りは海だけの小さい島国なんですけど、貿易は盛んで、豊かで…。
これだけ聞くと、良い島って感じですよね?
でも、あの島には『魔女』がいるって噂なんですよ…。
そこの島民には、『クイーン』と呼ばれてるんですけどね。
目を合わせると石になってしまう、メデューサの血を引く子孫が生きてる。
気に入らない人間は、影に引きずり込まれて消される。
海賊の失踪が相次ぐ、俺たちにとっては危険な島。
億超の賞金首の海賊が、餌食になってるんですよ…。
*
「へぇ…」
「だから、あの島は止しましょう!!」
「…この辺りには、あそこ以外に島は無い。それに、明日は嵐が来る」
ベポは魔女の話を聞いて、ビクビクと縮こまって体を震わせている。
あの島に停泊すると聞き、顔が真っ青になったペンギンを、隣にいたシャチが、ケラケラと笑って背中を叩いている。
はぁ…と、ため息を吐き、背を向けて自室に歩みだす。
「まぁ、一週間以上の飢えに耐えて、他を当たるなら別だがな…」
「「行きましょう、あの島に」」
(興味が沸いた、その『魔女(クイーン)』に…)
―ようこそ、愚かな人―