【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第1章 淡い。
* * * *
「さぁ、立て!!」
『───っ!!』
髪を引っ張られ、私は足だけで立ち上がった。
今朝、北の塔が何者かに襲撃されたという話が、島中に飛び交った。
が、牢の扉が破壊されていたのにも関わらず、私が平然と座っていたので、あまり騒ぎにはならなかったらしい。
『………名前、』
聞いておけばよかった。
あの海賊の船員の名を。
目つきが悪くて、隈があって、いつも不機嫌そうな、男。
あれからずっと、彼の事ばかりを考えていた。
熱はちゃんと下がったのか、笑うとどんな顔をするのか…、と。
(これから死ぬから、意味ないのにね…)
首から上に布を被され、視覚を失う。
両手を後ろでキツく縛られて、私はどこかに運ばれた。
たくさんの人々の声が聞こえ、近づく。
気づくと、私の体は震えていた。
(……ここに来て、怖いなんて、)
生きたい、なんて。
長い階段を上らされ、転べば、下から笑い声が聞こえてきた。
あそこにあの男はいるのだろうか、そう思うと、自然と笑みがこぼれてくる。
すぐに立たされ、階段を上りきると座らされ、布を脱がされた。
「どうだよ、気分は」
『……海軍の真似事をして、自身等が正義だと…、制裁を下すなんて、あなた達も私と同じね』
「なんだと…!?」
『なんて、愚か』
バシッと頬を強く叩かれ、私は男をひどく睨みつけた。
が、海楼石で力を制御されていると勘違いしている人々は、もっとやれ、と煽る。
「まぁ、皆さん。今から目の前で制裁を下しますから!!」
『………っ』
歓声が巻き起こり、私の頭上には交差した刀が準備された。
今か今かと待ち焦がれている島民たちの顔には、嬉々とした表情が浮かんでいる。
それでも私は、不適に微笑んでみせた。
(…終わり、これで終わり)
12時の鐘が鳴り、耳元に、刀と刀が擦れて首元に迫ってくる音が聞こえる。
ギュッと目をつぶり、歯を食いしばった。
が、まだ意識がハッキリとしていて、?、と顔を上げた。