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【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。

第1章 淡い。



*  *  *  *

日が落ちて、空に月が昇った。
島で唯一のバーを貸し切って、盛大に宴会を開いていた。
ジッと、注がれて数時間経った、泡が抜けてしまった酒を見つめる。


『お困りですか、目つきの悪いお兄さん?』


「………」

自らの死を覚悟し、目を瞑ったあの時。
澱んでいる空を背景に、傘もささずに、ただ深くフードを被って雨にうたれていた彼女を思い出していた。
薄らとしか覚えていない、女の顔。


…綺麗な髪だった。

雨に濡れていたが、胸元までの透き通るような銀色の髪。
けれど、瞳は漆黒の色を宿していて。
理由もわからず拘束され、殺意を込めた目で、ギロッと睨みつけた時に香った、あの甘い…。

「…はぁ」
「どうしたの船長? ため息なんて吐いちゃって」
「なぁ、聞いたかベポっ!! この島の海賊狩りをしていた女が処刑されるらしいぜ!!」
「えぇ!?」

(処刑…)


『逃げろ!』

確か、彼女が幽閉されているのは…北の塔、地下牢。
あの女のことだ、本当は逃げられるのに逃亡なんてしないんだろう。
それでいて、一人冷たい牢の中で凛とした表情で、時間が過ぎるのを待ってるんだろう…。


(なぜ逃げない…?)

「…おい」
「? なんですか、船長!!」
「明日処刑される女を、強奪するぞ」
「「はぁ…っ!?」」

酒を飲んでいたペンギンが、ブッと勢いよく吹き出した。
船員の誰もが、俺を驚いた表情で見つめている。


(船長が…、お、女に興味を!?)


「今朝、その女に助けられたんだ。恩がある、返さない訳にはいかない…」
「あぁ、そうゆう…」
「どんな子なの? 船長」

ベポの言葉に、さぁな…、と返し、粉末状にした薬草を口に入れ、水で流し込んだ。


(くそ…ッ、まだ残ってやがる!!)




―抱きしめられた感覚が―
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