第30章 例え茨の道でも
…その時俺は声が出なかった…
以前使っていた松葉づえを振りかざし、斗真くんに殴り掛かろうとしている翔兄さんの表情は…
本気で斗真くんを殺しかねない…恐ろしい顔つきだった…
けど…
<ガシッ!>
翔「…っ…!」
振りかざしたその杖を、斗真くんは易々と掴んでいた
斗「貴様…一度ならず二度までも…よほど死にたいらしいな…」
そう言って松葉づえを振り払い、その勢いで倒れてしまった翔兄さんの身体を仰向けにして跨がっていた
そして翔兄さんの首に、側にあったUSBコードを巻き付けていた
翔「あぐっ…!」
斗「…苦しいのは最初だけだからな…」
和「ま…待って斗真くん!それ以上は…!」
斗「安心しろ…ちゃんと自殺に見えるようにするから」
冗談じゃない!翔兄さんを殺されてたまるか!
和「止めて下さい!翔兄さんは大事な家族なんです!」
斗「・・・」
俺がそう言って止めると、斗真くんは力を抜いてくれた
翔「うっ…ゴホッゴホッ…!」
斗「…今回はこれ位にしてやるが、次はないからな…」
和「と…」
斗「和也…またな」
また…斗真くんは一体どうして俺の所に何度も来るんだろう…
顔を知られた俺達を生かしておくのは危険な事だと思うのに…
翔「…はぁ…はぁ…」
和「翔兄さん…大丈夫ですか…?」
踞り息を乱したままの翔兄さんの身体に手を添えると
<パシッ>
その手を勢いよく弾かれ…
<パーーーン>
和「しょ…」
突然翔兄さんから頬を叩かれた…