第30章 例え茨の道でも
~和也side~
『和也様…お気持ちは決まりましたか?会長もご返事をお待ちしておりますが…』
和「…解ってます…けど、もう少しだけ…」
『…畏まりました…会長にはそのように…』
和「はい…お願いします」
俺は広野さんとの電話を切り、深くため息をついていた
そして電話に夢中で…
「もしかして…本家からか?」
和「えっ?し、翔兄さん」
背後に翔兄さんがいた事に気が付かなかった
和「びっくりしたー…翔兄さん事務所に行ったのではなかったんですか?」
翔「この資料を取りに行っただけだよ…それより今の電話、もしかして広野さんか?」
和「え…ええ…」
翔「何かあったのか?やけに深刻そうな感じに見えたけど…」
和「そ、そんな事ないですよ。おじいさんが帰って来ないのかと…」
翔「…そっか…」
…やっぱりこんな時の翔兄さんは鋭いよな…
多分、俺の苦し紛れの言い訳を信じてはいないだろ…
でも、その事もちゃんと言ってたし、あながち全部が嘘ではないし…
翔「ちょっと俺、自分の部屋で書類整理してるから」
和「手伝いましょうか?」
翔「いや、良いよ。大した事ないし、お前も今日は久しぶりの休みなんだから、ゆっくりしてろよ」
そう言って翔兄さんは自分の部屋に入っていった
…そんな事いって俺の事気遣ってくれてるけど、あの書類の量を見る限り、大した事ないって事はないな…
…後でコーヒーでも持っていった時にでも様子を見て、大変そうなら手伝うか…
そう思っていたら突然
<ガバッ!>
和「えっ!?」
いきなり背後から誰かに抱き付かれた