第27章 虹の袂
雅「あの…そのままにって…どういう事ですか?」
『…うちはマンションで犬は飼えませんし、あの犬も老犬なので飼い主も見つからないかと…なのでそのまま野放しにして頂いて結構ですので』
野放しにしろだって!?
そんな事したら保健所に連れて行かれるだけじゃないか!
雅「何ふざけた事言ってるんですか!太郎は貴方が、ばあちゃんが独り暮らしで寂しくないようにって買った犬でしょ!?こうなった時の事考えてなかったんですか!?」
『・・・』
雅「そんな無責任な事…!」
<プツン…>
雅「…えっ…もしもし!」
俺がまだ話してる途中で、突然電話が切れてしまった
俺は折り返し電話をかけたけど…
<この電話は電波の届かない…>
電源を切ったのか、電話に出る事はなかった
智「どうしたんだ雅紀…何が…っておい!こんな時間に何処に…!」
俺は居ても立っても居られずに家を飛び出し、太郎の元に走った
ばあちゃんの家に着いて俺が繋いだ所に行くと、太郎は俺が来たことに気がついて
「…キューン…」
と、一声鳴いた…
太郎がいる周りを見渡すと、草を食べたのか食いちぎられた跡があり、餌箱も散乱していた
…ばあちゃんは3日前に外で突然意識を失ってそのまま亡くなった…
という事は太郎は3日も何も食べてないんだ…
俺は太郎の首輪から綱を外し、そのまま抱きしめた
雅「…ごめんな…太郎…お前さっき教えてくれてたのに、俺気付かなくて…お腹…空いてたんだよな…ばあちゃんが…恋しかったんだよな…」
「…クーン…」
俺は太郎を抱きしめたまま溢れる涙を抑えられなかった…