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アフタヌーンティーはモリエールにて

第7章 あまーいバニラの香りを添えて


これにも何か理由があるんだろーなー。
杏奈の頭に思い浮かぶのは、横浜に到着したときの萩原の言葉。
彼は杏奈とデートすると考えて、真っ先にこの街が思い浮かんだと言った。だからきっとディナーにこの店を選んだのにも、彼なりの理由があるのだろう。


「わかりましたー。その代わり、今度モリエールにきたとき、紅茶サービスさせてくださいねぇ。」


じゃないと食べません、絶対にとへらりと笑う杏奈。
断固拒否する体制の杏奈に、萩原は堪らず破顔一笑した。

ほんと、杏奈ちゃんは面白くて可愛いなぁ!それに、すっごくいい子だ。
デートだからと奢ってもらうのが当たり前だとは思わず、それでいて言い募らずスッと引いて男を立てる。更にはこんなに可愛らしいわがまままで言う。本当に末恐ろしい。

萩原さんのワガママを聞くんですから、私のも聞いてくれますよね?とこてんと首をかしげる杏奈に、喜んで!と萩原は笑って彼女の可愛らしいわがままを受け入れた。

それから二人は運ばれてきた料理に舌鼓を打ち、今日一日のデートを振り返りながら、楽しいディナーの時間を過ごした。
最初はお店の雰囲気に萎縮していた杏奈も、料理の美味しさと萩原との会話に、自然と緊張もほぐれて。楽しそうに顔を綻ばせる彼女をみて、萩原は自分の選択は間違っていなかったのだと思った。

聘珍楼の本格的な中華料理にお腹を満たされた二人は、車へ向かう道すがら、行きに気になっていたお店で買い物を済ませ、帰路につく。

ドライブも兼ねてと、少し遠回りして夜の横浜の街を眺めながら、車を走らせる。夜の横浜は、ネオンの光りが海に反射して、キラキラと輝きとてもロマンチックだ。
窓から見える夜景を横目に、杏奈は萩原を見る。


「萩原さんが今日ここに連れてきてくれたのは、私が文学好きだからですよね?」


杏奈はデートを楽しみながら、ずっと萩原がデートの場所に、あえて横浜をえらんだ理由を考えていた。
そして導き出された答えが、それだ。
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