第7章 あまーいバニラの香りを添えて
松田と一緒に来店することもあれば、一人でふらりと立ち寄ることもある萩原は、先日ひとりで来店した際に、ところで杏奈ちゃん…と、カウンターで紅茶を淹れる杏奈に話しかけた。
「今度の休み、俺とデートしてくれない?」
初対面の際にも冗談交じりでデートに誘われたが、あれ以来とくにそういった話はされなかったため、杏奈はきょとんとして萩原を見る。
しかし、萩原はニコニコと微笑むだけ。
暫し考えた杏奈は、にへらと微笑み返した。
「いいですよー。デートしましょー。」
微笑み返した杏奈に、色好い返事をもらえた萩原は、そうこなくっちゃと笑みを深めた。
その場で連絡先を交換し、後日ふたりの予定を照らし合わせて合致した日にデートをすることになったのだ。
「普段の私服も可愛いけど、今日はまた一段と可愛いねぇ。」
萩原は近くに歩み寄ってきた杏奈の姿を見て微笑む。
今日の杏奈は、オフホワイトのオフショルダートップスに、淡い桃色のプリーツスカートと白のミュールとデニムジャケットを合わせた、清楚なスカートスタイルに身を包んでいる。
普段は通学後にバイトに出ることが多いため、ベース以外は殆どしないメイクも、今日はバッチリしていて。杏奈のパーツひとつ一つを際立たせており、普段よりもずっと大人っぽい。
「もしかして、俺とのデートのためにオシャレしてくれたの?」
少女から女性へと変身を遂げた杏奈に萩原が問うと、彼女は照れ臭そうに、ふへへと微笑んだ。
「萩原さんの隣に並んでも恥ずかしくないように、ちょびっと背伸びしちゃいましたぁ。」
どうですか?大丈夫そうです?とクルリと一周、その場で回ってみせた。そして止まると、照れ臭そうに笑う。
杏奈はとても愛らしく、萩原は自然と優しい笑みを浮かべて彼女の頭に手を伸ばした。
「すっごく可愛いよ。」
杏奈が自分のために頑張ってセットしてくれた髪型を崩さないよう、優しい手つきで彼女の頭を撫でる。
もちろん普段も可愛いけどねと、パチンと片目を瞑る萩原に、杏奈はありがとうございますとふわりと笑顔を浮かべた。