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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


「いつかそのお三方にも会ってみたいです。」


松田と萩原がここまで信頼する三人とは、一体どんな人物たちなのだろう。
少なくとも二人がこんな表情をするくらい、素敵な人たちであることは間違いない。
杏奈は会って話してみたいと思った。


「いつか会えんじゃね?」
「うん。てか、俺たちがいつか連れてきてあげるよ。」


降谷と景光の二人もしょっ引いて。
ふわりと優しく微笑む杏奈に、松田と萩原の二人も優しい笑みを浮かべ、二人は彼女の頭に手をやり優しく撫でた。

多分、二人もまた五人で集まりたいんだなぁ。絶対。
伊達には連絡すればいいとして、問題はほかの二人だよねぇ。先ずは何処にいるのか見つけねぇとなと、イタズラを考える少年のような顔をした松田と萩原を見て、杏奈は思った。


「てか杏奈ちゃん本当に可愛いねぇ。彼氏いるの?俺と今度デートしようよ。」
「へ?」


二人をみて温かい気持ちになっていた杏奈は、いきなり話題転換してきた萩原の言葉に、思わず素っ頓狂な声を零した。
松田はそんな萩原に対して、またいつものが始まったと溜息を吐く。

特に止める様子もない松田に、あーいつものことなんですねーとそれを察した杏奈は、いないですけどと質問に答えて、更に言葉を続けた。


「でも私、萩原さんとは付き合いませんよー。」


へらりと緩い笑みを浮かべながら、ハッキリと交際を断った杏奈に萩原は目を丸くし、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる。
そして隣でそれを聞いていた松田は、思わず吹き出すとゲラゲラと笑い始めた。

……あ。正確には"付き合えない"だったなー。
硬直する目の前の萩原と、笑い過ぎてもはや過呼吸になっている松田を見て、杏奈は言葉の選択を誤ったことに気付く。

杏奈は自分が未成年だから、法に引っかかるため付き合えないと言いたかったのだ。
彼らは胸に正義を掲げる警察官であり、世の"正義"の基準は法律である。警察でありながらそれを犯した人間は、問答無用で組織から追放されてしまう。

例えお互いに真剣に交際していたとしても、法の影響力は変わらない。白日の下に晒されれば、立場がなくなるのは萩原の方だ。

彼のことを思ってそう答えた杏奈だが、萩原本人にその想いが伝わることはない。
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