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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


「伊達と景光も降谷のこと止めようとしてくれなかったからなぁ。」


苦い顔をする松田に、萩原も遠くを見ながら苦笑を浮かべる。
いつもやり過ぎる降谷を、ほかの同期はもちろん、特に親しくしていた友人ーー伊達と景光の二人ですら止めてはくれなかった。お陰で松田と萩原は降谷にコテンパンにされ、いつも何処かしら怪我をしていたのである。

昔を懐かしんで会話をする萩原と松田。
しかしそれを知らない杏奈は、楽しそうな二人を見ながら、へー、ほーと相槌を打つことしかできない。

先程から会話に入ることのできない杏奈に気付いて、松田以外に特に仲の良かった同期が三人いるんだよと、萩原が説明する。


「降谷っていうのが、見た目は綺麗な顔した優男なんだけど、とにかく力が強くてねぇ。そのうえ気が短くて直ぐに熱くなるヤツだったから。仲裁されてた俺たちはもうコテンパンにやられてたんだよ。」


いつも二人のケンカの仲裁をしていた降谷は、見た目は絵本の中の王子のように優しく綺麗な顔をした優男だ。
しかし気が短く直ぐに熱くなり手も出るような人間だった。その上、真面目で実技の成績も非常に優秀で、同期の中ではダントツに強かった。明らかに体格差のある相手を軽々と投げ飛ばすたびに、一体その細身の身体のどこにそんな力があるのだと驚いたものだ。

そんな彼が力加減もなく実力行使するものだから、降谷が仲裁に入ると度に松田と萩原は怪我をすることになる。


「景光ってのが降谷の幼馴染らしいんだが、アイツ降谷のこと知ってるから絶対ぇ止めてくれなかったんだよ。伊達も降谷の次に力強ぇのに、面白がって止めねぇしな。」


降谷の幼馴染の景光は、降谷のことを知っているからこそ止めようとしなかった。
あまりにもやり過ぎだと感じた際にはさすがに止めに入ってくれたが、自分が巻き込まれるのが嫌でいつも止めるのは松田と萩原が限界を迎えるギリギリだった。二人の限界を見抜いてあえてギリギリまで放置していたのだろうと、萩原は言う。

そして伊達は五人の中で一番ガタイがよく力も強くそのうえ打たれ強い、まさに殺しても死ななそうなタフガイだった。
しかし真面目というわけでもなく、降谷にボコボコにやられる二人のことを、腹を抱えて笑うだけで降谷を止めてくれることは殆どなかったのである。
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