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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


二人の気軽なやり取りに、萩原はなるほどねーと頬杖をつく。


「普段ふたりはどんな話してるの?」


喫茶店の店員とそこの常連ーー常連というほど頻繁に来店してはいないがーーという関係ではあるが、二人の接点は少ない。そもそも年齢が離れている。普通に生活していれば、まず関わることはないだろう。
そんな二人が普段どんな話をしているのか、萩原は単純に興味があった。


「どんなって、大体はコイツの紅茶の話聞いたり。あとは小説の話だな。」


萩原の質問に答えたのは、杏奈ではなく松田だ。
彼の言うとおり、お互いの環境はぽつぽつ話す程度で二人の会話の大半は、松田が零した感想から杏奈の紅茶愛が爆発して紅茶トークがはじまり、それに松田が相槌を打つ。もしくはお互いに読んだことのあるミステリー小説の話である。

松田の説明にこくこくと杏奈も同意する。
それを聞いた萩原は、もしかして杏奈ちゃんミステリー小説好き?と尋ねた。杏奈はそーですけど?とどうして今の"小説"という説明だけで、それがミステリー小説だとわかったのだろうかとこてんと首を傾げる。

そんな彼女の素直な仕草に可愛いなぁと内心思いつつ、それはねぇ…と口を開いた。


「俺がこの店に興味持ったのって、ミステリー小説愛好家に人気だったからなんだよね。」


萩原がモリエールに興味を持った最大の理由は、ここがミステリー小説好きが集う一風変わった喫茶店だったからだ。
その理由まではまだ分からないが実際訪れて見ると、店内にいるお客の大半がミステリー小説を手にしている。また店内に設置されている本棚に並んでいるのは、どれもミステリーか推理小説だ。


「だから、杏奈ちゃんもミステリー小説好きで、それが理由でここで働いてるのかなぁって。」


ミステリー小説好きが集まると聞いて、興味を持ったことが切っ掛けで働き始めたのだろうと萩原は推理した。
合ってる?と問う萩原に、あー…と杏奈は曖昧な声を上げる。
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