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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


「このアフタヌーンティーセットってのが気になってるんだけど、流石に男二人で頼むにはハードルが高くて。もし良ければ杏奈ちゃんも一緒に食べてくれないかなぁ?」


萩原が指差すのは、アフタヌーンティーのセットの写真。
鮮やかな琥珀色の紅茶の注がれたティーカップの横には、色取り取りの小さなケーキと一口サイズのサンドウィッチ、スコーンとジャム、クロテッドクリームが乗ったケーキスタンドが写っていた。

如何にも女性が好きそうなそれは、イギリスの極一般的なアフタヌーンティーのセットであり、英国紳士たちの間では極当たり前のものである。
だが、そういった文化に触れてこなかった日本の男性には、たしかに抵抗を覚えるものだろう。

もともと萩原は此処に、女性を連れてくる前提でリサーチに来たのだ。女性が好みそうなものを何も頼まずに帰ると、目的を果たさずに帰ることになる。

もちろんこの後に予定がなければだけれどと、断ってくれても構わないとさり気なく伝える萩原に、杏奈はしばらく考えるような素振りを見せた後に、のんびりと口を開いた。


「そーゆーことなら、いいですよー。」


この後とくに予定もないですしとへらりと微笑む杏奈に、ありがとうと萩原はにこりと微笑む。
とりあえずアフタヌーンティーセットと松田と自分の飲み物の注文を通すと、杏奈は着替えにスタッフルームへと着替えに消えた。

杏奈が立ち去りしばらく。
二人で取り留めもないことを話していると、お待たせしましたーと、注文したものを手に杏奈が戻ってきた。

スタッフルームに一度入ってから戻ってきた杏奈は当然のことながら私服姿で、カジュアルながら女性らしい服装の彼女に、私服姿も可愛いねぇと萩原が微笑む。松田は既に見慣れた格好であるため、ノーコメント。

ありがとーございますとへらりと微笑み返した杏奈は、早速二人の目の前に注文した品を置く。


「ご注文のアフタヌーンティーのセットでーす。」


萩原の目の前にアイスティーを、松田の目の前にホットティーを。そしてテーブルの中心にお目当てのケーキスタンドを置いた。
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