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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


そして今に至る。
店内に入り席に着くとすぐに萩原は松田と少女の関係を問い詰めた。そこで松田が面倒くさそうに説明したのは、彼が数ヶ月前からこの店に足を運んでいることで。

友人の反応に面白いオモチャを見つけとたばかりに、水とメニュー表を手にやってきた杏奈を捕まえた萩原は、自己紹介を済ませると店内にお客の姿が少ないことを確認し、これ幸いと話し続ける。


「ネットでここのお店のこと見かけて気になってきてみたんだけど、まさか杏奈ちゃんみたいな可愛い子がいるなんてねぇ。」


俺ってばラッキーと微笑む萩原を、松田はテーブルの陰に隠れて蹴った。目的を忘れて杏奈を口説きはじめた萩原を批判的な視線で射抜く。
しかしそれにも萩原は動じない。自分を蹴った松田には一目もくれず、自分の容姿をよく理解した優しく色香のかおる微笑を携え、杏奈を見続ける。


「ありがとうございます。萩原さんこそ、美人さんですねー。」


そんな萩原の言葉をへらりと笑顔で流し、杏奈はのほほんと返す。
謙遜するでも況してや媚びるでもなく、照れることさえなくさらりと受け流した杏奈に、萩原は僅かに瞳を丸くした。

今まで萩原が同じような言葉で口説いてきた女性たちとは、全く違う反応。あまり見慣れない返しに、言葉を失っている萩原から視線を外した杏奈は、その向かいに座る松田を見た。

じっと観察するように自分を見る杏奈に、なんだよと松田が言葉をかける前に、彼女はスッと視線を外す。


「イケメンにはイケメンが寄ってくるのかなー……。」


ふむと何か考え込むように言葉を零す杏奈に、松田はもちろん萩原も鳩が豆鉄砲を食ったような表情になった。

松田と萩原は系統は違うが互いに整った容姿をしている。それを二人とも自覚しており、褒められることには慣れていた。
しかし杏奈は、今まで自分たちの容姿を褒めてきた女性たちとは違い、褒めるというよりもただ事実をそのまま自分で受け止めるように口にしただけのような声音で。
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