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アフタヌーンティーはモリエールにて

第5章 マシュマロとガトーショコラ


ミステリーや推理小説などに興味のある女の子ならば、連れて行けば喜ぶだろう。しかしそうではない女の子は、楽しめないかもしれない。これは下見が必要だということで、萩原は松田を誘ったのだ。

男二人でカフェということに難色を示した松田だが、ミステリーや推理小説好きが集まると聞いて、興味を示したために文句は言わず、萩原の案内に従い下車した米花駅から歩き出した。

しかし目的地を目指す萩原が、駅のあるお通りから徐々に人気のない道に進み始めたあたりから、嫌な予感を感じ始める。
そして見覚えのある道に出たあたりで、その予感は的中した。


「"モリエール"ここだ。」


萩原の目の前には見覚えのある木造の建物。
松田が数ヶ月前から訪れている純喫茶ーーモリエールである。

萩原の説明には喫茶店に関する説明がほとんど無かったために、松田はギリギリまで気付くことが出来なかったのだ。


「萩原、別の店行こうぜ。」


早速入店しようと足を踏み出す萩原を、松田が止める。
最近の憩いの場である場所に、萩原を入れたくないと思ったからだ。
別に萩原のことは嫌いではないが、松田は杏奈の淹れた紅茶を飲みながら、彼女と話すのんびりとした時間が好きだった。

絶対ぇ萩原のやつ杏奈のこと気に入るだろ。
杏奈は今まで自分たちの周りにいなかったタイプだ。飾らずありのままで、飄々として予想外の返しをしてくる。加えてミステリーと推理小説好き。気に入らないわけがない。

萩原が杏奈のことを気に入れば、彼もモリエールに足を運ぶようになるだろう。
松田は杏奈のことを恋愛感情で好きなわけではないが、彼女のことは気に入っているわけで。萩原が来ることで杏奈との今の心地良い時間が減ることが、少し嫌だと感じてしまったのだ。

しかし、そんな松田の心の内を萩原が理解できるはずも無い。


「なんで?ここまで来たんだし入ろうぜ。」


ぱちくりと瞳を瞬かせた萩原は、当然の疑問を口にする。
先程まで文句も言わず付いてきた相手が、目的の店を目の前にしていきなり拒んだのだ。萩原からすれば意味がわからない。
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