第4章 アッサム、ときどき、カモミール
マリボーチーズとベーコンスライス、トマトのスライスにシャキシャキのレタスをサンドしたホットサンドは、全てがマッチして完成された美味しさで。
先日くちにしたサンドウィッチとボリュームは変わらないのに、見た目以上の満足感がある。
もりもりとホットサンドを食べ、口の中の塩気をアメリカンコーヒーで流す。薫り高いのにスッキリとしたアメリカンコーヒーが、ホットサンドと良く合い、松田はあっという間に完食してしまった。
ホットサンドを食べ終え、美味しいもので腹を満たされた多幸感に浸っていると、不意にポケットの中の携帯が震える。
携帯を開くと、そこには職場の同僚であり、警察学校時代からの腐れ縁である友人の名前。どうやらメールのようだ。
受信したメールを開き内容を確認した松田は、呆れたように溜息をひとつ吐く。
簡単に言うと、合コンの誘いだ。行きつけのバーで知り合った女性が友人を連れてくるというので、松田も含め四人で飲まないかという誘いである。
松田の友人は綺麗な顔立ちをしており、口も上手いため非常に良くモテる。長続きするかどうかは別の話だが。
こうして女性と知り合うたびに、松田にも声がかかるのである。
相変わらずの友人からの連絡に、松田はしばらく考えた末に了承の返事を返した。
モリエールに来た目的のひとつである人物は本日は休みのようだし、早々に女と別れてしまったためにこの後の予定はない。
対して女のほうに興味は待てないが、美味しいお酒は飲みたい。あわよくば関係を持つのも有りだろう。松田は現在、恋人はいないのだから。
指先を器用に動かして返信を送ると、すぐに待ち合わせの時間と場所が記されたメールが返ってくる。
「……あのぉ、すみませーん。」
カチカチと更に返信を作成していると、不意に声をかけられた。
何処かで聞いたことのあるようなのんびりとしたその声に、顔を上げた松田は、自分に声をかけてきた人物の姿を認めて、思わず目を見開く。
低い位置で一つにまとめられた薄茶色の癖のある髪。
眉上で切り揃えられた短い前髪。
そしてその下にある、澄んだ碧い眠たげなタレ目。
先日、紅茶を振舞ってくれた店員ーー杏奈が立っていた。