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アフタヌーンティーはモリエールにて

第13章 ふわりとほどけるババロア


呆れと苛立ちをあらわにする松田に、杏奈は大丈夫ですよーとへらりと微笑んだ。


「私、こう見えてけっこー鍛えてるんです!創作のために護身術も少々かじってますしー。」


興味のないものには一切触手が動かない半面、興味のあるものにはトコトンのめり込む杏奈は、創作活動に役立つからという理由で、護身術も少々齧っていた。
最低限、自分の身を護るすべは身に着けている。

へらりとゆるい笑みを浮かべながら、むん!と力こぶを盛り上がらせアピールする杏奈。
しかしその腕は、細く頼りない。


「……そうかよ。」
「はいー、だからーー」


松田に言葉を返して口を開いた瞬間、ドサっと音をたてて松田が掴んでいた杏奈のカバンが地面に落ちる。

それに反応して杏奈の意識がそちらに向いた一瞬を見逃さず、松田の手が彼女の細腕を捉えて。
掴まれたと杏奈が思ったときには、バンッと松田に両腕を拘束され、背後の壁に押し付けられていた。

一瞬のことで理解の追いつかない杏奈は、松田の片手により両手を頭の上で拘束されたまま、ぽかんと松田を見上げる。


「振りほどいて逃げてみろよ。これくらい余裕なんだろ?」


見降ろしてくる松田の視線は冷たい。
こんな冷たい視線を松田から向けられることのなかった杏奈は思わず硬直してしまう。

自分を見上げたままピクリとも反応しない杏奈に、松田のなかの苛立ちは募っていく一方だ。


「早く抜け出してみろよ。それとも……このまま好きにされてぇの?」


杏奈の耳元に顔を寄せ、低い声で囁いた松田の片手が、制服のスカートの裾から覗く彼女の細い脚に触れる。
ゴツゴツとした手で脚を撫でられた瞬間、ぞわぞわと杏奈の背筋に冷たいものが這った。


「っいや……!」


さすがの杏奈もここまでされて、抵抗しないわけにもいかない。

なんとか太ももを撫でる松田の手から逃れようと足を動かすも、両足のあいだに膝を差し込まれ動きを封じられてしまう。
更にグッと身体を密着されて、身をよじると自ら身体をすりつけるような形になってしまって。

どんなに抵抗しようとしても、びくともしない。
男と女の体格差や力の差を、まざまざと見せつけられて杏奈の目尻に徐々に涙がたまっていく。
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