第11章 差し出されたラムコーク
「……お!良いもん発見!もらうぞー。」
リビングに入るや否や、萩原が見つけたのは、テーブルの上に置いてあった松田が呑んでいたビール。冷蔵庫を開けてビールがあることを確認すると、家主の許可も得ずプシュッとプルタブを引いた。
萩原が勝手に人の酒を飲むのも、今に始まったことではない。
松田は明日に響かない程度にしとけよとだけ言って、ソファーに腰を下ろした。
片手に缶ビールと冷蔵庫から適当に拝借したつまみを手に、萩原も松田の向かいに腰を落ち着ける。明日にでも買い出しに行かなくては。
「とりあえずかんぱーい!」
「へいへい。」
浮かれた様子で差し出された缶ビールに、松田も飲みかけの缶ビールを当てた。カンっと小気味いい音がして、お互いに缶ビールに口をつける。
松田の缶ビールは封を開けてから時間が立っていて、キレが今一ですぐに口を離した。
一方の萩原は喉を伝うキリッとしたキレを感じながら、ゴクゴクと喉を鳴らし、美味しそうに缶ビールを傾けている。その様子をみた松田は、早いとこ空にして二本目を開けるかと、美味しくもないビールに口をつけた。
「この映画、続編やるんだよなぁ。」
缶ビールから口を離した萩原は、テレビをみて云う。液晶には相変わらず、数年前にヒットした映画が流れていた。
それで今頃、地上波で放送しているのかと納得して、へー、と大した興味もなく松田は萩原が勝手にとってきた酒の肴をつまむ。
「この映画さぁ、観たかったんだけど、当時付き合ってた子が別の映画を観たいって言って、結局観れなかったんだよなぁ。」
懐かしいなぁとクスクスと笑う萩原に、松田は特に興味を引かれることもなく、へーと淡々と返す。
取り留めもない話しをしながら、缶ビールを傾ける二人。飲みかけの一本目を空けて、松田が二本目も残り半分ほどになった頃、萩原はおもむろに口を開いた。
「今日さぁ、杏奈ちゃんとデートしてきたんだけど……あの子、ほんと可愛いよなぁ。」
反応が新鮮だし素直だし癒されたわぁと、ニコニコと浮かれる萩原。松田はそうか…と返して、缶ビールに口をつける。
そんな友人の反応をちらりと窺い見て、萩原はゆっくりと言葉を吐いた。