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アフタヌーンティーはモリエールにて

第11章 差し出されたラムコーク


一部の人間を除き、大抵の人間が仕事を終え、それぞれの自宅で落ち着いているであろう、夜中22時を少し過ぎたころ。
松田は既に就寝の準備を終え、リビングでのんびりと過ごしている。

東都市内にあるとあるアパート
駅からほど近く交通の便も良いが、築年数が三十年を超えるこのアパートは、この辺りの地では考えられないくらい、家賃が安い。

築年数は古いが数年前にリフォームしとても綺麗で過ごしやすく、また大家が年に数回催し物をするため住民同士も交流があり、人付き合いが希薄だと言われる現代では考えられないほど、人付き合いが盛んだ。

それを疎ましく思う人間はそもそも住みつかないため、住民が入れ替わろうとこのアパートは常にアットホームな雰囲気に包まれている。

古き良き昭和の雰囲気が残るそんなアパートの一室に、松田は住んでいる。

今日も一日中、訓練に身を投じた松田だが、明日は非番。
今夜は早めに床に就こうと、寝酒を片手に適当に回した洋画を観ている。

数年前に大ヒットしたSF映画を観ていると、ピンポーンと来客を告げるチャイムが部屋に木霊して。
この時間帯に訪ねてくる人間に心当たりがあった松田は、はぁ…と一度嘆息してソファーから腰をあげる。


「よっ!来ちゃったっ!」
「"来ちゃったっ!"…じゃねぇよ。」


ガチャリと扉を開けると同時に、パチンと片目をとじて品をつくる来訪者に、松田は思わずツッコミを入れた。
なまじ綺麗な顔をしているから、なんとも微妙な気持ちになる。


「つか"今からそっち行くわ"って……、おまえ明日当番だろ。萩原。」


松田の家を訪ねてきたのは、萩原だった。
数分前に松田の携帯に、彼から今から家に邪魔すると連絡があったのだ。

松田は明日は非番だが、萩原はそうではない。
なにを考えてわざわざ当番前日の、こんな時間に家を訪ねてきたのか、松田は呆れつつも理由を尋ねる。


「まぁまぁ!玄関で立ち話もなんだし、とりあえず中いーれーて。」


しかし萩原は、ニコニコとはぐらかして、お邪魔しまーすとスルリと松田の脇をすり抜け、勝手知ったるとズカズカと部屋にあがる。彼の強引さは今に始まったことではない。松田はひとつ溜息を吐いて、夜中の訪問者のあとを追った。
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