第5章 潜入デート
彼が去った所をぼーーっと見つめる。
『本物の怪盗キッドみたいだった…会った事ないけど』
さて、冷めないうちに紅茶を…と思いテーブルの方に向き直ると、こちらを見つめている彼と目があった。
どうしたのかな?なんて思いつつも紅茶を飲もうと手を伸ばすと、その手を掴まれる。
そして、先程怪盗キッドコスの男の子にされたのと同様に、手の甲にチュッとキスを落とした。
「消毒です」
なんてにこやかに笑って、紅茶を飲む彼。
一部始終を見ていたらしい周りの女子からキャーーーっと悲鳴が上がっている。
なんてことをしてくれるのだ、なんて思ったが、今は恋人設定であるのでこちらもにこやかに『ふふっ、ヤキモチ妬きなんだから』なんて言ってやり過ごす。
紅茶やケーキをつまみつつ、彼の様子や周りを警戒するのを怠らない。
安室さんが視線で、被害者の女の子を教えてくれた。
女の子はセーラー服に猫耳と尻尾を付けたコスプレをしている、可愛らしい女の子だった。
どうやら休憩に行くようで、女友達と一緒に学園祭を回るようだ。
恐らくこれを機に接触してくるはずなので、こちらも会計を済まし彼女たちの後を追う。
あくまで自然に、誰にも悟られないように。
彼女たちの後を追う中、色々な事をした。
お化け屋敷では、人外が苦手な私が終始安室さんに抱き着き怯え、それが「可愛い可愛い」と愛でられ、暗がりの中でたくさんキスされたり
コスプレしませんか写真館で、ウェディングドレスとタキシードを着せられ写真を撮られた。
自分の結婚式がまだなのに、安室さんとまさかのこの格好で写真をとるなんて…。
ちなみにここでも「お綺麗です、誓いのキスを…」なんて言われて唇にキスをされた。
バッチリと写真に収められました←
しばらく後をつけていると、彼女が用事か何かで抜けるらしく、1人になってしまった。
すると安室さんから
「飲み物でも買ってきますので、ここで待っていて下さい。
すぐに戻りますから」
と、言われた。
どうやら1人で彼女をつけるらしい。
あくまで一般人に扮している身なので、邪魔になってはいけないという判断の下、彼を待つことにした。