第1章 それは突然に
大学院生に扮する沖矢昴こと、赤井秀一は江戸川コナンと共に彼が住んでいる毛利探偵の事務所の下にある、喫茶店ポアロの前に来ていた。
遡ること15分前に、この呼び出し主、コナンからの電話があったからだ。
〜15分ほど前〜
プルプルプルプルプルプル……
「ん…?電話か…(坊やからだな…)
…もしもし、沖矢です、どうかなさいましたか?」
「昴さんっ!大変なんだっ!!今すぐポアロの前に来て!!
僕そこで待ってるからっ!!」
「なにがあっ…切れましたね…。
(仕方がない、行くか…)」
〜今現在〜
そうして突然電話で呼び出された沖矢はポアロの前にいたコナンと合流したのである。
「それで、コナン君。
一体どうしたんですか?」
「昴さん、ポアロの中見てよ」
言われた通りポアロの様子を見たが、何も変わった様子はないようだ。
相変わらず、アルバイターの榎本梓が忙しく働いているのが見えるだけだ。
1つ言うなれば、彼等が警戒している安室透がいない、と言う点だろうか。
「……?特になにも変わった事はなさそうですが…。
あぁ、彼はいないようですね」
「違うよ、昴さん!ほ、ほら、あの人!
ねぇ、あの人だよ!」
そう言われ再びポアロに視線を戻す。
コナンが指差す所を見ると、確かに見たことのない女性がいた。
スラリとした佇まいに薄茶の綺麗なロングヘア、遠目でもしっかりと分かる目鼻立ちに相当な美人だと分かる。
ポアロのエプロンをつけている所を見ると、どうやら新しく入ったアルバイターの様だ。
「ん…?あぁ、綺麗な女性が新しくアルバイトに入ったようですね」
「え、昴さん、本当にあの人の事知らない…?」
「えぇ、初めて見る方ですね。
あの方がどうかしたんですか?」