第10章 最強タッグ(?)
飲み物でも淹れて来ます、そう言って昴兄が居間から離れて2人きりになってしまった今現在の状況と言えば…
安室さんに無言の威圧感を浴びせられています。
どうしろと言うのだろうか、いきなり消息不明になった事を謝ればいいのか、それともアメリカで会った事を黙っておけと言う視線なのだろうか、分からない←
いや、多分両方だと思うけども。
でも居なくなったのなんて数時間だよ、何日も居なくなった訳でもないし、子供でもないのだから心配なんてしなくていいのに…なんて口を裂けても言えない。
数秒間見つめ合った後、安室さんから視線を外し溜息をついた。
「はぁ…貴方には心配して怒ってばかりですね、僕」
『あ…す、すいま…』
「謝らないで下さい。
許しませんからね。
こう見えて僕は意外と小さい男なんですよ」
確かに…安室透は笑って優しくなんでも許してくれそうな感じがする。
だが、バーボンの方はそれとは逆に鋭い刃物みたいな男だ。
どちらが本当の彼なのか分からないが、それにしてもよく真逆の演技が出来るものだ、凄い。
「…この俺が振り回されるなんてな」
『え…?』
「いえ、何でもないので気にしないで下さい」
なんて言ったのか、聞き返そうとしたがタイミング良く昴兄がトレーにコーヒーを乗せ戻ってきた。
私、コーヒーは苦手なのだけれど淹れて来たのであれば飲むしかあるまい。
そう意気込んでいたのに、目の前に差し出されたのはコーヒーではなかった。
「いいお話は出来ましたか?
貴方と私はコーヒーで構いませんか」
「えぇ」
「愛香はアールグレイですよね」
『え、あ、うん、ありがとう』
「どう致しまして」
何故私がアールグレイ好きだと知っているのだ…コーヒーが苦手なのも人前では出した事がないし、普通に飲むようにしていたのに。
まぁ気にしていても仕方ないので、この出された良い香りの紅茶をまずはいただく事にする。