第8章 盗まれたのは
動きが止まった今しか伝えるチャンスはない。
そう思い、水分不足と声の出し過ぎでガラガラの声を振り絞る。
『かい…とだから…かいとだか…ら、気持ちい…んだ…よ?』
途切れ途切れだが、伝わっただろうか。
精一杯先程言えなかったら言葉を紡いだのだが。
首に回していた片手を頬に滑らせ反応を疑うが…暫く沈黙が続いた。
ん…?何故に無反応…?
やはりまだ伝わってないのだろうか、そんな不安から名前を呼ぶ。
『かい…と…?
…んんっ…!?!』
名前を呼んだ瞬間、私の中で沈黙していた彼のモノがドクンと大きくなった。
えっ、な、なんで急に?!そう思わざるおえない。
あんなに大きいモノが更に私の中で質量を増したのだ。
それに驚いていると、彼の身体が小刻みに揺れているのがわかった。
黙って彼を見ていると、彼が嬉しそうにニヤリと笑っていた。
「あはは、愛香、嬉しい事言ってくれんじゃん!
なーんか下手に考え過ぎてたわ、ごめんな。
さーて、愛香が俺で感じたくれてんなら…頑張らなきゃなっ」
姿は怪盗キッドなのに、中身は快斗で…そんなアンバランスさに何故か惹かれた。
誤解が解けて良かった、そう思いながらこれから自身に起きるであろう事を覚悟しつつ諦めムードだ。
これ以上頑張らなくていいのに、一応伝えとくが無駄だろうなぁ。
『もう…がんばらなくて…あぁあっ!!』
「貴方はただ私に感じて下さい」
せめて最後まで話を聞いて欲しい。
最後まで言葉を紡ぐ前に律動を開始した快斗。
既に彼の中では怪盗キッドモードに戻っている。
本当に切り替えが早い。
あぁ、これは限界まで付き合うしかないのだろう、そう心の中でため息をついた。