第12章 欲張りな願い
扉を開けると、新一の鬼気迫る声がして、石栗が死んでいることを知らされた。
勿論新一が殺す理由なんてないし、所謂密室殺人というものらしい。
にしても、本当によく殺人現場に遭遇する人達だな、と柊羽は思わず項垂れた。
ポアロは刑事さん達の憩いの場にもなっていて、そんな彼らの話が聞こえてきた時があった。
小五郎とコナンは殺人を呼ぶ死神だ、と。
その時はただ身内を罵倒された気分で「失礼な」と思ったが、今ならあの刑事さんに賛同できる気がした。
(あの時の刑事さん、ごめんなさい。)
間もなく静岡県警が到着し、現場検証が始まった。
もうここから先はプロに任せようと、柊羽は探偵たちの行く末をじっくり見届けることにした。
(新一、事件を解くことに夢中で周りが見えてないな。透さん結構観察してるけど…)
目の前のことに気を取られているコナンが少し心配ではあったが、自分は安室悪人説は否定派だ。
かといってあくまでもそれは気持ちの問題でどちらの肩を持つつもりもない。
第三者という立場で、あくまでもフラットに見極めると決めていた。
目の前の大事な二人の見据える先が、どこかで繋がっていればいい。
そんな淡い期待を抱きながら。
コナンは相変わらずマイペースに調査を進め、遂に真相に辿り着いたのかいつものように麻酔銃で小五郎に狙いを定めようとしている。
その動作に安室が気付き、照準を覗き込んだことにコナンが驚いた。
(さあ、どうするの?名探偵___)
柊羽は段々と自分だけが知っている攻防戦を楽しみ始めていた。
結局コナンは周りの大人たちにヒントを出しながら真実を導き出させることに成功した。
(まあ、今回は引き分けってとこかな?)
けれど、安室のことだ。恐らくコナンに何らかの違和感を抱いたことだろうから、何か聞かれるかもしれない。
しどろもどろにならないように心の準備はいつでもしておこう、と柊羽は思ったのだった。