第12章 欲張りな願い
「では、事件も解決したことですし僕はそろそろ…」
「ん?なんだ、お前は泊まっていかねぇのか?」
「そうしたいのは山々なんですが、明日も早くから探偵業の依頼がありまして」
どうやら安室は帰るらしい。
聞いていなかった主催者意外は少し申し訳ない気持ちになっていた。
「そんな忙しい時にわざわざこんな所まで…ありがとうございます!」
「いえ、いい気分転換になりました。それに僕も収穫がありましたから」
「収穫?」
蘭がそう問うと、安室はにっこりと柊羽を見つめた。
柊羽は突然のことにきょとん、としている。
「園子さんからの授業料です」
つまりあのスコートのことか、と柊羽は恥ずかしくなり目を逸らす。
安室は身長差を埋めるように少し屈み耳元で柊羽にだけ聞こえるように続けた。
「今度は二人で。話したいこともありますから…」
どくん。
心臓が大きく跳ねた。
"話したいこと"とは、思い当たることが多すぎて見当がつかないが、何にせよ状況が大きく変わるような気がして。
「はい、楽しみにしています。」
でも顔に出せば皆が不思議に思うだろうと、柊羽は気丈に振舞った。
「ではこれで。失礼します。」
安室はそう言うと軽く会釈をし、別荘を後にした。
「はぁ~いちいち動作がスマートだこと!で?柊羽お姉様~最後に何言われてたんですかぁ~??」
「ちょっと園子!変な事聞かないでよ!」
相変わらずな園子。
蘭に関しては、"変な事"と揶揄している時点でなんか想像してるよね、と内心ツッコミを入れつつ…
「ふふ、内緒!」
と、いうことにしておこう。
納得いかず騒いでいる園子を蘭に任せ、柊羽は気になっていた人物の元へ。
「お疲れ様」
「ホントにな。オメーは全然助ける気ねぇし」
「私は誰の味方もしないって決めたからね~」
「にしちゃあ安室さん寄りに見えたけどな」
「それ先入観!」
「そうかぁ?」
「でも安心して。後で透さんに新一のこと何か聞かれても誤魔化しとくよ。」
「そうしてくれると助かる。でもいいのか?」
「言ったでしょ?誰の味方もしないで私なりの真実を見つけるの!」
どちらも傷ついて欲しくない。
そんな欲張りな願いを、神様は聞いてくれるだろうか。