第12章 欲張りな願い
「おっほん…あー、お取り込み中悪いが、飯食うか?」
小五郎の声で、はっと我に返る柊羽。
反射的に手を離し少し距離を置いた。
「すみません、久々の再会なもので…お見苦しいところをお見せしました。それより僕たちもいただいていいんですか?」
「え、えぇ!大したものは作れないけど、お詫びも兼ねて。」
「ありがとうございます。柊羽さんも食べますよね?」
「あ、はい!いただきます。というかもしお邪魔でなければお手伝いさせてもらえませんか?」
「え、でもお客様だし…」
「私がやりたいだけですから気にしないでください」
「彼女の料理の腕なら僕が保証しますよ」
「まあ、そこまで言うなら…」
本当は、初対面の男の人となるべく関わらない方法を探していただけだったのだが。
そしてきっと安室は気付いた上でフォローしてくれたんだろうと思った。
何はともあれ無事に安全を確保でき、柊羽はほっと胸を撫で下ろした。
お昼のメニューはもう決まっていたようで、用意されていた材料で冷やし中華を作った。
コナンはまだ本調子ではなかったのか、唯一冷房の効く石栗という男の部屋で休んでいるらしい。
寝ているなら無理に起こすことはないと思っていた一行だが、その石栗の部屋あたりから鈍い音が聞こえたので、見に行くことになったのだが…
「合鍵が昨晩から見つからない?仕方ない、ベランダから行くか」
と、話している石栗の友人達。
そんな中、なんとも物騒な発言を安室がする。
「なんなら僕が開けましょうか?そういうの割と得意なので…」
といってあっという間に鍵を開けてしまった。
怪盗キッドみたい!と大はしゃぎのJKたちを横目に、柊羽は思っていた。
(いやいや、ピッキング得意な設定って大丈夫なの透さん?)
意外とやんちゃな面もあるんだな…と心配よりもそっちが気になっていたのだが。
「セキュリティ会社の知り合いがいましてね…」という言い分だったが、そんなコンプライアンスもへったくれもない会社ヤバすぎる、と柊羽は思っていた。
(まあ、今は唯一疑念を抱いてくれそうな新一がいないからいっか。)
きっとこのやりとりを見ていたら、新一の安室を見る目が余計に厳しくなっていたことだろう。