第12章 欲張りな願い
一人思い出に浸っていたら、いつの間にか目的地に着いたらしい。
別の世界にいた柊羽は、自分たちの他にスペシャルゲストがいるということを知らないままだ。
「よし!じゃぁ着替えましょ!はい柊羽お姉様、これ!」
と、渡されたのはスコート。
「え…いいよ私は!こんなの着たら公害!」
「何言ってるんですか!お姉様細いしスタイルいいし絶対似合います!!」
「そうですよ!まだまだイケます!」
「それに着たらきっといいことあります!」
最後の園子の主張は正直意味がわからなかったが、柊羽はJK2人の若い勢いに押され、渋々了承せざるを得なかった。
(いやいや…短いよね)
スカートの布面積が異様に小さい。
やっぱりやめよう…と私服に着替えようとすると
「柊羽さん終わりまし…わぁ!やっぱり似合いますね!」
「えっどれどれ!ほんとー!!こりゃーもう…ムフフ」
見つかってしまった。
園子は何を考えているのかエロオヤジのような顔になっている。
「あなた達2人のスコート姿だけで十分だよ。ねえ私やっぱ…」
「さ!行きましょ行きましょ!お待ちかねですよ!!」
言い切る前にぐいっと腕をひかれる。
(別に新一も小五郎さんもこんなの待ってないと思うけど…)
重い足取りで部屋をあとにし、テニスコートへ向かう。
「えーっと、多分もういるはず…」
園子が誰かを探している。
連れならそこにいるけど、と身内には興味が無いのかスコート美女を探す小五郎と蘭のスコート姿に頬を赤らめる新一を見やる柊羽。
すると遠くから、パコーンという音とざわめきが聞こえてきた。
「あ!いたいた!しかもすごいギャラリー!」
「え、なんで…」
透さんが、いるの?
安室のテニスの腕よりも何よりも、それが気になってしまって。
傍から見たらおかしなリアクションに違いない。
すると安室がこちらに気付き、プレイをやめて歩み寄る。
柊羽は思わず俯いてしまった。
会いたかった。
けれど心の準備が。
縮まる距離に比例するように五月蝿くなる鼓動が更に判断を鈍らせる。
なんて言おう。
どうやって接していたっけ?
どんな顔、してるかな。