第12章 欲張りな願い
運転手も無事に確保でき、翌日一行は伊豆へと向かっていた。
「小五郎さんよく前日でOKしましたね、私達は有難いですけど」
「ちょうどスケジュール空いてたからな!伊豆も行きたかったし気にすんな!」
(…はは、ほぼ毎日暇だろ)
と、コナンは心の中で呟いた。
「それよりなんで突然?埋め合わせなんて気にしなくてよかったのに。」
蘭が園子に疑問をぶつける。
確かにそうだ。それに埋め合わせといってもこんなに突然でなくてもよかっただろうに。
「埋め合わせってのもあるけど…これよ、これ!」
そう言うと、園子は嬉しそうにボーイフレンドがテニスをしている動画を見せてきた。
何でも、トレーニングの一環でテニスを始めたらしく、今度テニス部の園子に手合わせ願いたいという内容で、園子としては折角やるなら負けるわけにはいかない!と意気込んでいた。
真面目そうな彼だ。
そして照れながらも嬉しそうな園子は、なんとも可愛らしい。
いつもあれぐらいしおらしければ、とも思ったがそんな姿は想像できなくてすぐに考えるのをやめた。
(テニス、か…)
そういえば一度、松田と打ち合ったことがある。
『へぇっ…!なかなかやるな!お前もっ』
パコン、パコンと規則正しい音がコート内に響き渡っている。
『陣平さん、こそっ!…ちょっとは手加減!してくださいよっ!』
パサ…とボールがネットに引っかかってしまった。
『っし!また俺の勝ち。』
『はぁ…はぁ…なんでそんな、息乱れないの…化け物。』
『おい。』
『ははっ、怖い顔がもっと怖くなってますよ!』
『にゃろう』
ネット越しに頭を捕まれ、髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
『あ、ちょっ、やめてください!』
『お前が悪い。にしても、なかなかやるよな。テニス部だったのか?』
『大学のサークルで遊んでた程度ですよ』
『ほぉー。ちゃんとやってたら俺より強ぇんじゃねえの?』
『んな馬鹿な。陣平さんこそやってたんですか?』
『まぁちょっと。でも一人だけ敵わねぇヤツがいたな。』
『その人もなかなかの化け物ですね。』
『はっ、違ぇねえ。ま、爆弾処理の腕は俺のが上だけどな!』
男の人って、何かと競いたがるよな。
でもそう語る松田の表情は穏やかで、嫌いではない…と柊羽は思った。