第12章 欲張りな願い
あれから数日間、あのメールの通り安室から連絡が来ることはなかった。
それでも仕事はあるのでポアロには来ていたが。
「もう4日目ですよ~風邪長引いてるみたいですね」
「インフルかな?こんなに休んじゃって梓ちゃんに申し訳ないって言ってたよ」
「戻ってきたらその分ビシバシ働いてもらいますから!」
「はは、お手柔らかに」
梓にも疑われないようにフォローしている自分を褒めて欲しい。
なんて健気だ…と自己分析をしていると
「こんにちは~!あ、いたいた柊羽お姉様!」
「お邪魔しまーす」
「園子ちゃん、蘭ちゃん!学校帰り?」
「そうです!今日は柊羽お姉様に用があって!」
「私に?」
話しながらも、2人に座るよう促しボックス席で向かい合う。
「この間のベルツリー急行、事件が起きちゃって楽しめなかったなぁーと思って」
まあ確かに、本来の楽しみ方は出来なかったがスリルは存分に味わうことが出来たけど、と柊羽は内心思っていた。
「だから突然ですけど、明日伊豆の別荘にご招待します!もし用事がなければ行きましょ!ダーリンの話も結局全然聞けなかったし夜は女子のお楽しみ会もしたいですし!」
「あ、最後のやつが一番の目的ね?」
「バレました?だって柊羽お姉様の浮いた話聞いたことないし!あんなイケメンのことなら尚更気になります!」
「明日かぁ」
確かに急だが、特に用事はない。
それに、一人でいるとろくな考えが浮かばないし、気分転換もたまにはいいかと柊羽は誘いに乗ることにした。
「楽しそうだし、行こうかな」
「よかったー!!」
「すみません突然で。でも、嬉しいです!」
「こちらこそ招待だなんて、なんだかいつもごめんね」
「いいんですよぉ~!その代わり、分かってますよね?」
園子は期待と悪戯心に満ちた表情をしている。
「いいけど…ハードル上がるからあんまり期待しないで」
「そんなのかるーく飛び越えちゃってください!」
そんな無茶な。
期待されても、本当に何もないのに。
適当に話す内容を考えておかないと。
「じゃああとは運転手捕まえてきます!」
「お父さん、多分大丈夫だと思うんですけど…一応聞いてきます」
いや、むしろそこまだ聞いてないんかい!と柊羽は思わずツッコんだ。