第11章 迫られる選択
啖呵を切ってきたものの、どうしたものか…
柊羽はあれから自宅へ戻り、考えていた。
なんでコソコソ組織になんて…と思ったが、自分が同じ立場でもそうするだろう。どこから漏れるかもわからない情報を誰かに話すメリットはない。
探りを入れられることも、煩わしく思うだろう。
たとえ、何か別の目的があって組織に潜入しているスパイだったとしても、それを彼女(仮)に言ってどうなる?
特別な身体能力もなければ、安室ほどの頭脳もない。
ただ組織から狙われる対象になって、安室の重荷になるだけだ。
だったら、もっと別の方法で彼を支える方法はないだろうか。
やっぱり本人に聞くのが一番か。
となると、とどのつまり連絡が取れないと始まらない。
(はあ、また振り出しに戻った…)
返事がないのに何度も連絡するのはどうも気が引けて、柊羽はなんとなく探偵バッジに手を伸ばした。
「おーい、私でーす。もしもーし。」
『探偵バッジをオレオレ詐欺に使うなよ』
「その話し方は新一!ってかホントに話せるんだね、すごい」
『で、要件は?』
「つれないなぁ。別にないけど、急に本番だと不安だから試しに使ってみたの。でもこれ、新一がどういう状況か見えないから、使う時はコナンくんに話すつもりで通信した方がいいよね?」
『そうだな、誰といるか分かんねぇし。てか柊羽姉、ちゃんとそういうとこ頭回るのな。』
「失礼な!私だってちゃんと考えてます!」
『へぇー。でも感情的になるとうっかりしそうだから、気をつけろよ?』
「う…それは…はい。あ、そういえば、沖矢さんは新一の事情は知ってるの?」
『いや、言ってねぇけど…あの人のことだから薄々勘づいてるんじゃねぇかなー。』
「よかった…今日その辺も探りながらだったからドキドキだったよ」
『あー、悪かった。でもその警戒心これからも持っててな』
「りょーかい!」
『…もし…いや、やっぱいいや』
「え、何、気になる」
『わり!蘭が呼んでるからまた今度な!』
「あちょ、新一!…もう。」
いつもながら勝手だな、と思いつつも珍しく新一が褒めてくれたことに心が踊った柊羽であった。
_もし、本当に悪いヤツだったらどうすんだ?
喉まで出かけた新一だったが、不用意に傷つける必要は無いと思い飲み込んだ。