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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第11章 迫られる選択


もう一度、メールしてみるか。

「どうしたんですか?」
…うざいかな。

「連絡待ってます」
…重い?

「明日ポアロには来ますか?」
…まあ、無難?

やはりなかなか思い切ることが出来ず、柊羽ははぁーっと盛大にため息をついた。
仮でもなんでもない本当の彼女なら、こんなに気を使わずに連絡できるのに。
偽りという壁が重くのしかかる。



うーーーんと唸りながらスマホと睨めっこしていると、ブブブッと新着メールの通知が来た。



「…うそ、来た」



そう、安室からだった。
連絡が来たことに舞い上がりそうになるが、もしかしたら別れを告げられるかもしれないと思いぐっと堪えた。

腹を括らなければ。どんな内容でも受け止めないと。
対策は、それからでいい。

そう思いなんとなく正座をして背筋をピンと伸ばしスマホに向き合った。



恐る恐る、開封する。



From:安室透
件名:Re:
本文:連絡が遅くなりすみません。ある依頼でバタバタとしていて…
少し厄介な案件でしばらくそちらにかかりきりになりそうです。
ポアロには風邪で休むと伝えてあります。
またしばらく連絡ができなくなるかもしれないので、先に伝えておきますね。




遠ざけるわけでも核心に触れるわけでもない、当たり障りのない内容。
都合のいい女とも変換できそうでチクリと心が痛んだが、同時にまだ諦める必要は無いとも思える内容でもありそこは喜ぶべきだろう。

…それに、自分にも風邪とでも言えばよかったのをそうしなかったところに秘密の共有のような特別感を覚えて、嬉しかった。





(こんなに女々しかったっけ?私。)





3年前のあの事件以来、もう大切な人なんて作りたくないと思っていたし、できっこないと思っていた。
それは松田への懺悔のようなものもあったが、一番は大切な人を失う苦しみから逃れたくて。
あんな思いをするなら、最初から作らなければいい。
そう思っていたはずなのに、自分の意思に反して、心は意外と素直だったらしい。



「長い間心配かけて、ごめんね。」



ずっと殻に閉じこもっていた私を、苛つきながらも見守っていてくれたであろう写真の中の彼に語りかけてみた。





「会いたいなぁ…」





昨日も会ったけれど、もうそんなことを思ってしまう自分の女々しさを認めざるを得なかった。
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