第11章 迫られる選択

「なんとなーく、分かりました。私のしてた事が危なかったっていうのも。これからは気をつけます。」

「そうだ、探偵バッジも使ってないでしょ？案外役に立つんだからちゃんと持っててよね。」

「持ってるよ！ただまだ慣れなくていざと言う時に使おうという思考に辿り着かないというか…」

「そういう意識から変えていってください。貴女が組織について知っているということが明るみに出たら本当に命を狙われます。バーボンと本当の恋仲であると疑われでもしたら尚更。」

「バーボン、ね…」



まだ慣れない、そのコードネームとやら。
でもなんとなくその名前は透さんにピッタリだなと思ってしまう自分もいた。



「そういえば大事なこと聞き忘れてた。透さんは、無事？連絡が来なくて」

「無事だと思うよ。ただ、僕らに組織の人間であることがバレたと思ってるかもしれない。そうなるともう、現れない可能性もあるけど…」

「そっか。そうだよね…」



さっきは勢いでああは言ったものの、よく考えれば昨日もはぐらかされたし、今も連絡はないままだ。
このまま着拒でもされてフェードアウト…ってことになればそれまで。
一度家には上がったが、残念ながら場所の記憶は曖昧すぎて頼りにならない。
というか、あの安室のことだ。着拒するような状況になったら、借家などすぐに解約してしまうだろう。
柊羽は今更ながらに不安になってきた。




「おや？怖気づきました？」




この人は、人の神経を逆撫でするのが趣味なのだろうか？




「…まさか。女に二言はありません！」




けれど、さっきから何度もその挑発的な言葉に助けられている気がするのは、何でだろう。




「沖矢さんこそ、いつでも助けに来れるようにトレーニングしといてくださいね！」

「できれば助けに行くような状況にはならないでいただきたいんですがね。」

「それは勿論気をつけます。もしもの話です！」

「そんな遠くない未来に起こる気がします」

「あーもう！ああ言えばこう言う！！」




2人のちぐはぐなようで息のあったやり取りを、まるでコントだな、と静かに見守るコナンであった。