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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第10章 ミステリートレイン


「知ってるわ。お姉ちゃんの恋人の諸星大とライバル関係にあった組織の一員…」

「ライバル、ですか…まあそれでもいいでしょう。その話もじっくりしたかったんですが、事情が変わりましてね。大人しく着いてきてもらいますよ。」


チャキ、と脅しの拳銃を構える。
シェリーは抗うつもりはない、とばかりに両手を挙げた。


「いいの?あなたの大事な彼女。放っておいて。」

「!!」


その言葉にぴくりと反応してしまったが、『これは罠だ』と言い聞かせ冷静を装った。


「…さあ、あちらの貨物車へ。」


シェリーは大人しく従い、最後尾の列車へと移動した。


「ご心配なく。僕は君を生きたまま組織に連れ戻すつもりですから」

「へえ?彼女の言う通り優しいのね」

「フッ…そんなに彼女のことが気になるなら今度ゆっくりお話でもしましょう」

「生きて帰れるなら…ね。この貨物車の中、爆弾だらけみたいだし」

「!?」


ベルモット、か。
何としてでもシェリーをここで殺すということか。
ならば仕方ない。少々危険が伴うが、作戦を切り替えるとしよう。


『危ないことはしないで』


柊羽の言葉がこだまする。


(バレたら、怒られそうだな)


でもそれも悪くない。彼女の怒りは自分を大切に思ってくれている気持ちの現れのような気がしているから。
そんな考えさえも、バレたら更に怒りを買いそうだが。


「作戦変更です、少々手荒くいかせてもらいますよ…」


と、その時背後に気配を感じ振り返る。


「ベルモットか?悪いが彼女は僕が連れて…」


言い終わる前に、何かが足元に転がった。
見ると、そこには手榴弾が。これはベルモットの仕業ではない。だとしたら…


「誰だ!?」


立ち込める煙の中薄らと浮かび上がるシルエット。
それは、死んだはずの憎き相手によく似ていて…


「誰だお前!?」


いつも冷静沈着で自信に満ち溢れたバーボンだが、有り得ない出来事に珍しく取り乱していた。


爆発を寸でのところで交わし、8号車に戻る。
シェリーは爆発した貨物車に取り残されたまま列車は切り離されぐんぐん遠ざかる。


一人の少女を守ることが出来なかった。
そしてまだあの男が生きているかもしれないという可能性が浮上した。

「くそっ」

人知れず、歯を食いしばった。
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