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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第10章 ミステリートレイン


状況は最悪と言ってもいいが、シェリーの抹殺は組織としては成功だ。
ベルモットに報告しなければ怪しまれるだろう。
今は切り替えよう。
そう思い、ベルモットにはメールで「任務完了」と連絡を入れ、柊羽のいた場所へ向かう。



が、そこにはもう柊羽はいなかった。



爆発の衝撃で起きたか?
それとももっと前?
だとしたら、あの男と接触しただろうか?
それよりも、そうだ、何故あそこにいた?

何かに巻き込まれただけだろうと思う。
けれど今は「無事ならそれでいい」と片付けられる程の余裕が無い。



もし、自分に関わったから、だとしたら…



守ろうと決めたばかりの決心が揺らぎそうになる。
自分の近くにいるせいで危険な目にあうなんて、本末転倒。
やはり関わるべきでは無かったのか。



そもそも柊羽は自分の提案に乗り彼女になってくれているだけで、何のメリットもないはず。
引き返すなら今か?
まだ間に合うのか?

底なし沼のように、次から次へと負の感情が押し寄せる。





『お前らしくない』と、空から聞こえた気がした。














そして列車は停車し、乗客たちはホームに降り立った。

柊羽はと言うとあれからずっと寝てしまっていたようで、直前にコナンに起こされたのだ。



「ふぁ、あ…なんか頭痛い…」



んーっと伸びをして、キョロキョロと辺りを見回した。

(透さんは…またいなくなっちゃった、か…)

沖矢もいないし、哀は寝ているし、知らない間に火事があったらしいし。
なんだか浦島太郎になった気分だ。

あの時一瞬見えた透さんのようで透さんではない人格。
気にはなるけれど、今はともかく無事を確認したかったし、何より彼の笑顔を見たかった。のに…

(ちょっといじけるくらい、いいよね)







安室はそんな柊羽の様子をひっそりと眺めていた。

良かった、無事だ。
それにあの様子、都合のいいように解釈してもいいのなら、自分がいなくてガッカリしているのでは、と思ってしまう。
それを少し嬉しいと感じたのは、この虚無感からか。






危険を犯してでも裏付けたかったヤツの死。
証明できたと思っていた。
だが生きているかもしれない可能性が少しでもあるならば…

赤井、秀一…

延長線だな。覚悟しろよ…?
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