第10章 ミステリートレイン
各自客室で待機、というアナウンスに従い、事件解決組以外は蘭たちの部屋に集まっていた。
色々な会話が繰り広げられているが、柊羽はそれどころではなかった。
新一たち、帰ってこないってことは犯人はまだ見つかってないのかな。
やっぱり哀ちゃんの様子がおかしい。見張っておかないと…
透さんとの最後の会話…なんだろう?なんか、引っかかるなぁ…
あーもう!!気になること多すぎ!!!
キリがないと思った柊羽は、とりあえず優先順位を自分なりに考えて、今は目の前の少女のことに集中することにした。
すると、誰かからメールが届いたのか携帯を取り出し画面を見た哀の表情が一変。
(…ビンゴ)
周りに探偵ばかりいるせいで影響されてる気がするが、自分の予想が当たるとちょっと嬉しくて、彼らの気持ちが少しだけ分かった。
トイレと言って部屋を出る哀に心配そうな蘭。
追いかけようとする蘭を制し、柊羽がその役を買ってでた。
「大丈夫、私が見てくるから。」
そう言って部屋を出るがもう哀の姿は見えなくなっていた。
(私なら、人気のない方に行くかなあ)
とまた推理して、哀が向かったであろう方へ歩みを進める。
もうどこかの部屋に入ってしまっただろうか。
自分の足音で鍵となる物音を消さないように慎重に。耳を澄ませ、精神を研ぎ澄ませる。
すると僅かに聞こえた話し声に、柊羽は咄嗟に反応した。
(一人でいるなら話し声なんて聞こえないか。それとも誰かと、一緒?)
恐る恐るその気配を感じる部屋へと近付く。
まずは聞き耳でも立ててみるか、と扉へ顔を寄せようとした瞬間、勢いよくそれが開いた。
「うわっ!?」
思わず身を引くと、足元に少しの衝撃。
その原因である哀は驚いた表情で一瞬柊羽を見やったが、すぐに逃げるように走っていってしまった。
「ちょ、哀ちゃん!」
反射的に追いかけそうになったが、もしさっきのものが誰かとの話し声だとすればこの部屋にはまだ誰かがいるはず。
そう思い踵を返して哀が出てきた部屋へと足を踏み入れる。
(どうか、透さんではありませんように。)
不思議と、そんなことを思ってる自分がいた。