第10章 ミステリートレイン
出発前に、世良真純という少女に会った。
どうやら彼女も探偵らしい。
それにしても、流石ミステリートレイン。その名は伊達じゃなく、一癖も二癖もありそうな乗客が示し合わせたかのように勢揃いだ。
彼らがどんな会話をしているのかも気になったが、柊羽はそれよりも気になることがありそわそわしていた。
(透さん、いないな…何かあったのかな?)
『大丈夫?』という短いメッセージを入れてみたが、返事は来ない。
「柊羽さん!そろそろ乗らないと…」
「そだね。行こっか!」
柊羽は蘭の表情から心配をかけてしまっていることに気付き咄嗟に取り繕った。
程なくして定刻になり列車は出発。
未だ安室とは連絡が取れないまま、早速車内では謎解きゲームが始まり柊羽も女子高生チームと一緒に共犯者としてコナンを翻弄するも、コナンは見事謎を解いた。
その得意げな推理をボーッと見つめていると、ふとある異変に気づいた。
「初めましてだよな?君だろ?灰原って子」
先程知り合った世良真純。
世良は普通に話しているように見えるが、哀の様子がおかしい。
すると突然、
「誰だ!?」
その世良が血相を変えて扉を開けた。
気のせいだったと言っているが、柊羽はどうも引っ掛かった。
さっきから、胸騒ぎが治まらない。
安室が音信不通なことは勿論、車内の雰囲気がピリピリして居心地が悪い。
そして哀の怯えよう。
柊羽はタイミングを見計らって哀に声をかけた。
「哀ちゃん、大丈夫?」
そんなつもりはなかったけれど、哀は驚いたようでビクッと肩を震わせた。
「ご、ごめん!驚かせるつもりは…」
「別に貴女のせいじゃないわ」
「ねえ哀ちゃん、これってただの、ゲームだよね…?なんだか落ち着かなくて。」
哀は俯いた。
直感で分かっている…組織の誰かが、いる。それも複数人。
柊羽は新一の一件で組織の詳細は知らずとも存在は何となく知っているから、そんなことが分かれば変な気を起こさないとも限らない。
巻き込む訳にはいかない。
いつもなら当たり障りのない言い訳が思いつくのに、動揺のせいで頭が回らない。
そんな雰囲気を察したのか、柊羽は何も言わず哀の背中をさすった。