第10章 ミステリートレイン
そして当日。
柊羽は蘭や園子たちと一緒に集合場所へ来ていた。
「柊羽お姉様のダーリン、またお預けかぁ…」
「お預けって…あとでちゃんと来るからさ、ね?」
「こんなに焦らされて…かなりハードル上がってますよぉ?」
「ははは…(そこは多分、心配する必要は無いかなあ)」
きっと彼の外見も内面も、園子のハードルを楽に超えるだろう。
そしてそんなやり取りをじっと見つめる視線がひとつ。
「ねぇ、今日は安室の兄ちゃんも来るの?」
コナンだ。
「うん、園子ちゃんが透さんも是非って言ってくれて」
「柊羽お姉様のお相手に相応しいか見極めるのよ!」
「へぇーそうなんだ…」
柊羽はそれっきり考え込んでしまったコナンが気にはなったものの、考え事の邪魔はしないでおこうと追求はやめた。
(これは…ほぼ、確定かもな。柊羽姉には悪ぃけど…)
コナンはこれから起こりうる悲劇を、ひっそりと嘆いていた。
安室はというと、適当な理由をつけて後で車内で合流すると柊羽に話していた。
そう、今日は"組織"として任務を行わなければならない日。
何としても、優しい彼女にバレるわけにはいかなかった。
正直ここまでスムーズに事が運んだのは驚いた。
ベルツリー急行に柊羽から誘われたのは恐らく偶然。
誘いを断らなかったのは、一応は探偵という肩書きを背負っている身としての単純な興味と、彼女とポアロ以外で会ってみたいという思いから。
だがその後組織の上から「シェリー抹殺」の命が下され、その機会を探っていると、同じくベルツリー急行に辿り着いた。
柊羽の誘いに乗っていたおかげで潜入の手筈はいとも簡単に整ったわけだが、なんとも複雑な気分だ。
基、シェリーは生きたまま捉えるつもりだし何人も殺すつもりはないが、あくまでそれは予定であり、自分や…柊羽に危害が及びそうになれば誰かに手をかけることになるかもしれない。
絶対に、しくじるな。
何度も自分に言い聞かせる。
ベルモットは割と組織の中で言えば話の通じる方だが、シェリーが絡むと少し感情的になってしまう所も、安室の抱く不安要素のひとつだった。
決戦の地へと向かう道すがら、様々なケースを思い浮かべてはシミュレーションをした。
何としても、彼女だけは___